日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第84回大会
セッションID: PD-159
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4. 臨床・障害
日本におけるコロナウイルス・パンデミック・ドリームに関する事例報告
*松田 英子山崎 有望松岡 和生
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抄録

奇妙で鮮明な悪夢を見る人の増加を示すコロナ・パンデミック・ドリーム現象を欧米の研究者が報じている。自粛生活による孤立,健康不安,死への不安,経済的不安などの心理社会的ストレスがその主要因とされている。本研究は日本におけるコロナ・パンデミック・ドリームを取り上げ,悪夢の形成の素因ストレスモデルに基づき,新型コロナウイルスが目に見えない特徴と感染への不安や感染防止のための自粛生活の状況的な感情的負荷がどのように悪夢の階層性に現れるか事例検討した。結果として,PTSD性の悪夢より強度の低い特発性の悪夢が多く,欧米と比べ日本では感染者あたりの死者数が少ないことが影響していると考えられた。死に関する夢は,高年齢層で報告された。新型コロナウイルスは,その目視できない特徴によって,バリエーションのある嫌悪イメージ(音,匂い,虫等)となって出現する傾向があった。またコロナに関連するマスク,人工呼吸器や清掃道具なども出現する傾向があった。そして夢の中での対処法も,回避する,清掃する,退治するなど個人差があり,明晰夢ではないが夢の中での対処行動が認知的なレベルで悪夢の深刻度を決定する可能性が示唆された。

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