主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
本研究は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)によるキャリア意識への影響を検討することを目的とした。大学生158名を対象に,職業専門性志向尺度,キャリア・レディネス尺度,感染脆弱意識尺度,経済的不安を問う尺度を使用したインターネット調査を実施し,階層的重回帰分析を行った結果,パンデミックによる影響で,他人との接触を避け自律的に業務を遂行する職業への志向や資格等で権威づけられた職業への志向が高まることが明らかとなった。また,資格等で権威づけられた職業志向については,コロナ禍以前からのキャリアへの関心と計画性の高さによって,効果が調整されることも示された。さらに,感染症脅威により,キャリア関心性がコロナ禍以前よりもコロナ禍以後の方が高くなることが示された。本研究は,コロナ禍前後を同時に測定していることや,質の異なる対象を同時に分析せざるを得ないこと,統計的には有意ながらも十分に差があるとは言えないことなど,課題は残されたが,重大インシデントとしてのパンデミックは,従来の研究にある震災等の自然災害などとは質の異なる影響を与えたことが示唆された。